師走、室生寺の雪
2019年12月23日撮影
最近は雪がすっかり少なくなってきたと言われています。たしかに子供の頃は奈良でも普通に雪が積もったように記憶しています。
最近では雪が積もるどころか、雪が降ることもまれな事となってきました。子供の頃、草が枯れ果てた野原に一晩のうちに雪が積り、何もかもが息を潜めて、まるで時間までも凍てつくようなそんな厳しい冬があったような記憶がうすぼんやりと残っています。
一冬のうちに雪が降るのは数えるほどしかありませんので、天気予報で降雪の知らせがあると、前の夜から「さてどこの雪を撮ろうかな」とあれこれ考えるのも楽しい時間です。今回は雪の室生寺を訪れました。 室生寺の公式Webはこちらから
山門が開く9時に室生寺に到着しました。夜に雪が降ったのですが降った雪の量が少なかったようで、かろうじて家の屋根に残っている程度です。
土門拳さんの定宿として有名な橋本屋さんの横を通り室生寺の表門に向かいます。室生川にかかる太鼓橋の上には雪が残っていましたが、参拝客が通れるように人の幅の雪を払ってくれていました。とはいえかなり急な橋ですので足元が滑らないよう気をつけながら渡っていきます。
室生寺の仁王門です。受付の方に聞いてみるとこの雪は今シーズンの初雪だそうです。雪の室生寺ということで、多くのカメラマンが押し寄せているかと思ったのですが、予想に反して誰も見当たりません。ほぼ貸切状態でちょっと拍子抜けです。
鎧坂には全く雪が無く、石段正面、国宝の金堂の屋根にだけ雪が残っています。もともとこの場所には雪が積もらなかったのか、あるいはお寺さんが朝早くから雪かきをしてくれたのでしょうか。
室生寺の本堂での「潅頂堂(かんじょうどう)」に差し込む朝日です。キリキリと冷えた空気の中、杉木立から差し込む太陽の光跡がとてもきれいでした。
「潅頂堂」から次の石段を上がると五重塔が目前に現れます。このあたりは朝の太陽が真正面から当たるので雪はすっかり溶けていました。どんな時間帯に拝見してもこの五重塔は美しいと思います。この五重塔ではあれこれ撮り方を考えるのですが、過去に有名な写真家の方々が様々な季節、様々なシチュエーションで写真を撮っておられるのでどう撮っても「どこかで見た写真」になってしまうのが難点です。
今日は、朝の光がきれいでしたので五重塔の後ろから逆光で撮ってみることにしました。檜皮葺(ひわだぶき)の屋根から立ち上がる湯気や、滴り落ちる雪が溶けた水滴が朝日を浴びてキラキラと輝いています。
五重塔から奥の院へと続く道です。この時間帯はとてもいい光芒が入ったので、雪解けの霧と相まって室生寺の厳粛な空気が表現できました。この光景を見れただけでも来てよかった〜と思います。